05 | 2017/06 | 07

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Yeovil Town日記・53 

FM2007日記・Yeovil Town~兄から弟への挑戦状~

Epilogue




---------- キリトリ -----------

冬枯れの大地を覆う空は、すっきりと澄み渡っていた。

それはまるで、2人の逢瀬を祝福するかのように。

気温は僅かに8度。とても14時半を過ぎたばかりとは思えないほどの寒さが、Huish Parkの上空を凪いでいる。

「Premiershipの〝戦場〟としては不適当」などと陰口を叩かれるココには、当然、暖房施設など存在しない。

マフラーにすっぽりと首を埋める子供達、でっぷりとした体躯を防寒具で一層大きくさせている男達、ぴったりと寄り添っては〝愛〟という名の加熱器で暖め合うカップル…吹きっ晒しの中で観客は、めいめいに暖を取りながら、試合の熱風を待ち詫びていた。

「今日も寒いなぁ~」

3年近くも過ごしているくせに、未だ英国の寒さに慣れないMunuaが、そう言いながら小刻みに震えている。南米はウルグアイ出身の彼にとって、この寒さは骨身に凍みるらしい。最近は練習中も、愚痴ってばかりだった。

確かに、英国の冬は寒い。英国南部に位置するYeovil でも、9月を過ぎれば夜の気温は10度を下回る。ここ数カ月、Huish Parkの平均気温は僅か8度。穏やかな陽光が覆うデーゲームとはいえ、ピッチは今日も立つ者の芯を震え上がらせている。

しかし、その寒さも気にならなかった。体内から燃え出る熱量が、冷気を遮断しているのかもしれない。

心の奥底で、魂が滾る。

視線の先には、深い青色をまとった背番号26を捉えていた。186センチ、91キロの筋骨隆々とした体躯が、えもいわれぬ威圧感を放散している。これが、世界最高クラスのディフェンダーの迫力。これが、世界最高クラスのチームを鼓舞するキャプテンの佇まい。微塵の隙もないように見えた。大声で味方を叱咤しながら、〝戦場〟に臨むための準備に余念がない。試合ではどれほど猛るのか。

(自分の弟ながら、とんでもない怪物に育ったもんだ)

零れ落ちた感嘆は、羨望や諦観でなく、純粋な賞賛。同じプロフットボーラーの道を歩む者だからこそ解る、兄弟のくくりを踏み越えた畏敬の念が、心を満たしていくのを感じていた。

(だからこそ、挑み甲斐がある)

右手に託された腕章に手を伸ばし、ぎゅっと力を込めてからたくし上げた。

主審がコイントスを促す。歩み出れば、目の前には弟の姿。対峙する格好になって、自然に目が合った。

(笑ってやがる)

だが、間違いなく自分の頬も横に伸びている。

これは歓喜だ。

「いよいよだね。胸を貸す準備は万全だよ」

両の眼をしっかりと見開きながら「弟」は短く言って、右手を差し出す。

「8位のチームが偉そうに。喰って残留のための〝こやし〟にさせてもらうぞ」

弾き飛ばさんばかりの勢いでその手を掴むと、握り返す掌にぎゅっと力を込めた。

そうして互いに無言のまま数秒視線を交わし、中空を舞うコインを見届ける。

賽は投げられた。

もう1度だけ握手を交わし、互いに陣地へと散る。

フットボール人生において最も重要で、大切で、愛しい試合が、鋭く耳朶を射抜く笛の音と共に幕を開けた。

―――――――――― キリトリ ―――――――――――

vsChelsea.jpg


ホームでのリベンジを目指し、懸命に走り、身体を張ったYeovilイレブンだったが、Chelseaが誇るSuperな才能達の輝きは、その努力を遥かに凌駕した。

前半20分、芸術の域にまで高められた超速カウンターからHiguainに決められて先制を許すと、5分後には〝緒戦〟でYeovilを地獄へと誘ったAdrianoの超絶弾丸ボレーで2点目がスコアボードに記される。そして48分、ドリブルでエリア内に侵入したAdrianoが再び弾丸シュートを突き刺し0-3。Yeovilも惜しいシーンを何度かつくり出したが、Cechの美技に防がれてゴールは奪えず。この日、キャプテンマークを巻いて先発したPaul Terryは、懐疑の目を跳ね除けるのに十分なパフォーマンスを見せたものの、チームを勝利に導くことはできなかった。

vsChelsea-result.jpg


―――――――――― キリトリ ―――――――――――

足は鉛が積み上げられたかのように重く、もう、一歩も歩けなかった。極端に水分の少ない呼気が、ヒューヒューと出来損ないの楽器みたいな音を掻き鳴らす肺から吹き上がる。両手で膝を押し込み、上半身を支える。そうしていないと折り曲がれそうになる体を支えられなかった。90分強の肉弾戦で次々と生まれた裂傷や「こぶ」がズキズキと痛む。重力が、この周囲だけ加重されているのかと思うほど、全身が空気を負荷と認識している。

脳は先ほどから立ったままでいることを拒絶する信号を発し続けているが、地べたに突っ伏すことは魂が許さなかった。それは絶対服従でしかないのだと。

0-3のスコアは、完敗以外の何ものでもない。しかし、屈服するつもりはなかった。諦観とその刷り込みは未来を閉ざすものだ。

だからこそ、呆然と立ち尽くす者、ピッチへ座り込む者に喝を入れ、引っ張り上げていくのを終えるまでは倒れるわけにはいかなかった。

単にゲームキャプテンを務めたからというわけではない。自らの、プロフットボーラーとしての矜持だった。

乱れる息を整え、朽ちかけた体躯に再起動をかける。

誰かが近付いてくる気配を感じたのは、その時だった。

見上げた先には、まるでこれからキックオフを迎える者のように確かな足取りでやってくる弟の顔があった。

「まだまだだね。でも、これから強くなりそうだ。最後の最後まで、誰も諦めていなかった。走り続けていた。良いチームだね。また1つ、厄介なライバルが増えたなんて、頭が痛いな」

笑顔で言い、青色の26番を目の前に突き出した。

「また、ここで会おう」

〝ここで〟に力を込めて、緑と白の7番を差し出す。

交錯する手。

交錯する青と緑。

交差する兄と弟。

一つの夢の結実。

ファーストコンタクトから、半年。スコアはあの時と同じ0-3だった。ホームでの醜態と〝2度目〟を恥じなければならない。

だが、悲観することはない。

まだ、我々は歩み始めたばかりなのだから。

一歩一歩、着実に踏み締めればいい。

0-3。

刻まれた数字は同じでも、試合を支配できた。シュート数も負けていない。

これこそが、未来への希望の萌芽。

今は頼りなく、弱々しくても、丹念に育めばやがて大輪を咲かす。

時間は、諦めない限り無限にある。

いつまでも継承されていく。

フットボールが、連綿と続く輪廻転生の中で磨き上げられたように。

Paulはこの日、弟との邂逅によって確信した。

Yeovil Townのステージが第1幕を終えて第2幕へと進んだことを。

そして――

はっきりと映っていた。

さほど遠くないいつか、緑と白の横縞をまといし〝Glovers〟が、欧州を席巻する姿が。


---------- キリトリ -----------

というわけで、Yeovil Town日記はこれにて一区切りでございます。

まだ残留を果たしたわけでも、何かを成し遂げたわけでもありませんが、日記を始める動機となった「Premiershipで2人のTerryによる対決」は実現できましたので、個人的には「目的達成」だと思っています。

もう、ゴールしてもいいよね?

(分かるヒトだけ分かって下さいw)


今、こうしてナンバリングを見てみると、53にまで達しているわけです。たった5シーズン弱をだいぶ引っ張ったなと思いますね(苦笑)。
(ノ´∀`*)

その間には更新が滞ったり、変な企画を試みたりと色々ありましたが、皆様のご声援があったからこそ完結まで持っていけたということは間違いありません。心より感謝申し上げます。
m( __ __ )m

それにしても、こうしてFM日記職人を続けていたからこそお知り合いになれた方も沢山いるわけで、拙いながらも書いていて良かったなと思います。

もちろん、某巨大掲示板で「面白くない」と書かれれば、少なからずショックを受けたり、「もう止めようかな」と思ったりもするのですが(苦笑)、数人でも読んでくれる方がいるうちは、日記職人でいたいなと思っております。

既報のように、今度は手軽に読めるタイプでウンターハヒンク日記を始めます。つくり込みとは無縁のため、更新もスムーズにいくことでしょうw 忙しかった年末進行もいよいよ終わり、年内の仕事は明日まで。休みに入ったら、ここ2週間くらい満足にプレーできなかったFMを存分に楽しもうと思ってます。意外と次の更新は早いかもしれません。
ヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノ

なお、Yeovil Townの10/11シーズンは残り10試合まで進んでいます。残留できたのか、涙の降格か。それだけは近日中に報告できたらなと考えております。

ではでは、今回はこの辺で。大宮に巻が来るかもしれないという報道を耳にし、実現を切望している暁空也でした。
(*^ー゚)/~~
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コメント

お疲れ様でした!

長きに渡るYeovil日記も、これにてひとまず終了ですか。

兄弟対決は実現するのかなと思いましたが、遂に実現しましたね。
現実では、まずあり得ないであろう対決を実現させた暁さんの手腕に拍手!
そして、映画化された、某携帯恋愛小説を凌駕する文章の巧さ^^;
正直、感想は人それぞれでしょうが、私は暁さんの日記が一番面白いと思っています!
次のウンターハヒンク日記も楽しみにしています。

P.S.
兄弟と言えば、巻(兄)は大宮移籍の可能性ありですか。
弟はまだまだ芽が出ませんが、いつか、こちらの兄弟対決も見たいものです。
しかし、名古屋はいなくなるばかりで補強が進まね~(爆)

深く感謝を

>どらぐら様

いつも、ご愛顧ありがとうございます。心より御礼申し上げます。

恋空ですか…ちょっとだけ読んでみて唖然としましたねw

ああいう、ある意味ベタなのを仕込んでおけば、女子中校正からガッポリ稼げるんだなと勉強にはなりましたが。
(;^ω^)

余談はともかく、そう言って頂けるとモチベーションが湧いてきます。とてもありがたいです。

Terry兄弟の対決は、テーマでしたからね。悩んだ挙句、決断しました。載ってませんが、兄のレートは7。ミスらしいミスもなく、頑張ってくれました。

次回作は、だいぶ適当なつくりになるかと思いますが、気長にかつ暇つぶしに読んで下さいませ。とりあえず文章量を減らす形で考えてはいます。私のはたぶん長すぎる。
(;´∀`)

巻祐樹は初年度から名古屋で結構試合に出てて驚きました。ゴールも決めてましたよね?どこまで伸びるのか、楽しみに待ってます。

名古屋は本田の穴埋めが大変そうですね。当面はマギヌンをそこへはめこむのでしょうか?お金持ちクラブですし、大物を狙っている?確かに補強の噂は少ないですね。。。

お疲れ様でした。
暁さんらしい良い最終話ですね。
テリー兄弟がカッコイイ。
現実でも応援してしまいそう。

次回作はウンターハヒンク?
ブンデスにもいたようですが…。
すいません、まったく覚えていません。
時期的には、ヒッツフェルト率いるマフィアバイエルンが、欧州で猛威を振るっていた頃かな?

大変だとは思いますが、ブンデスの舞台でバイエルンと対戦するのを楽しみにしています。
撃破してやって下さい。
  • [2007/12/27 23:48]
  • URL |
  • バイエルン好き
  • [ 編集 ]
  • TOP ▲

●3●<お疲れさん。

ちょうど良い区切りではないでしょうか。
綺麗に締まったと思いますよ。ご苦労様でした。
08はパッチのゴタゴタ解決するまで手を出さないことにしております。

で、
もう、ゴールしてもいいよね?

…なんか聞き覚えがあったが思い出せない。
ググった。ググりました。
なんか線で消されてるし薄々予感はしてました。


●3●<またerogeかYO!!

ちなみにインギー様はやったことがありません。
そうそうカミングアウト連発してなるものですか。ザマァミロ。


●3●<でもCXXXXXDはやった。しかも目から汗が出た。これは秘密だ。

お疲れ様でしたヽ( ´ー`)ノ

とうとう完結しちゃいましたね。
これで終わりだと思うと寂しい気もしますが。
次のドイツも期待しております。
数年後、高原、稲本が解雇され、ウンターハヒンクに。
そんな流れを予想してしまうのは私だけでしょうか。
暁さんならやりかねない。。。o( ̄ー ̄

私も今日で年内の仕事が終わりました。
早速FMやりたいとこなんですが、日本語版が・・・。
なんかパッチ当てられないそうです。
結局、今回も2つ買うことになりました。
また無駄な出費・・・(゜-Å)

ありがとうございます

>バイエルン好き様

いつもご愛顧ありがとうございます。

自分でキャラ付けしたテリー兄弟ですが、実際のところはどうなんでしょうね。WSDの連載で見る限りでは、それなりに交流があるようですが・・・。私も、ちょっと興味を持ちました。

ウンターハヒンクは、バイエルンが欧州の中で今より活躍していた頃(失礼)に2シーズンだけいました。WSDのシュルツェ氏のコラムで取り上げられていて、「こんな小さなクラブなんだ」と驚いたのを覚えてます。でも、地域密着の好クラブらしいですよ。

バイエルンと戦えるまで何年かかるか分かりませんが、頑張ります!

もはやインギー様のためにネタ振りw

>インギー様

お褒め頂き、ありがとうございます!
( ・ω・)∩

そして、着実に毎回拾って頂けてありがたいですw
(ノ´∀`*)

ちなみに私もプレーしたことありませんwww

弟が持っているのは不覚にも発見してしまったことがありますw

ってか、インギー様、最後の行は・・・まさかアニメ化されてるヤツですか?
(・∀・)

その発想頂き!

>ボビー様

「寂しい」という言葉が、何よりの褒め言葉です。ありがとうございます。

高原&稲本の獲得・・・その発想は頂きました!!
(σ ̄ー ̄)σニヤリゲッツ

また物語的にも盛り上がりますしね。彼らが「使える」うちに昇格せねば。。。

FMの日本語版は酷いみたいですね・・・。両方買って、日本語版は日本語化のツールになってしまうという。セガめ。。。
(# ゚Д゚)

ボビー様の次回作も楽しみにしてますね!

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