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06 | 2021/07 | 08

フォーメーションが刻むモノ 

フットボールにおけるフォーメーションの意義をどう捉えるか。

そう尋ねれば恐らく、「あくまで人的資源を最も有効に使うためのツールに過ぎず、優先すべきは選手が力を発揮できるかどうか。フォーメーションに選手をはめるなんて愚の骨頂だ」という模範的な解答が返ってくるだろう。

フットボール後進国だった過去の日本では───今は発展途上国だろうか─、無益なフォーメーション優劣論が猛威を振るったこともあったが、それも過去のこと。今では、「時と場合に応じ、はたまた相手との“噛み合わせ”を意識してフォーメーションは使い分けるものだ」という「常識」が、醸成されつつある。

しかし、フォーメーションも時に“個性”や“伝統”の体現者になりうることを看過してはならない。

例えば、バルセロナとオランダ。彼らの4-3-3からは、永い年月をかけて培われた“DNA”が垣間見える。同じ4-3-3でありながら、主張はまるで異なる両者の姿。そこに、フォーメーションのレーゾンデートルが息づいている。

○パスを繋ぐための4-3-3

バルセロナでは、それこそ日本でいう小学生の年齢の下部組織から、一貫して4-3-3を用いている。これは何も「トップチームに昇格した時に(同じフォーメーションに馴れていると)適応しやすい」という安直な理由ではない。このフォーメーションこそが、「『バルセロナらしさ』の象徴である、高ポゼッションと流麗なパスワークを実現するのに最も優れている」(育成コーチ)からだ。

その根拠を示すには、紙とペンがあればこと足りる。紙に4-3 -3の配置を描き、それぞれを線で結ぶ。すると、全ポジションが綺麗な三角形で連結されているのが判るはずだ。4-4-2や3-5-2では、FWとDFの間が分断されてしまい、こうはならない。「常にボールホルダーを1頂点とした三角形をつくる」のがパスワークの基礎中の基礎だが、サイドバック─インサイドハーフ─ウイングという形でDF~FWの間においても三角形を保てる4-3-3は、スムースかつコンパクトなパスワークを生み出すための、最速にして最善策なのである。


○トータルフットボールのための4-3-3

本来、4-3-3の代名詞と言えばオランダだ。代表も、プロクラブも、もちろんアマチュアも、その大半が4-3-3で戦っている。

けれども彼らの企図は、バルセロナのそれとは全く別物だ。

「“特産品”のウインガーに敵を侵略するための大地を与え、ダイナミックかつワイドな展開に必要な“隙間”を維持し、全体がポジションチェンジを繰り返す時間を捻出するためには、前線のスペースが豊富で、しかも自由度の高い4-3-3が最適」

ミケルスが紡ぎ、クライフが編んだ「トータルフットボール」の歯車として組み込まれる4-3-3には、彼らだけの世界が在る。


○ツールから哲学を経て、そしてDNAの中へ

肥大化したフットボールは、いかようにも埋めがたいクラブ間格差を発生させ、魅力的な人材は大金に釣られてあっと言う間に「持てるモノ」の元へ流出してしまうようになった。今や、「バンディエラ(伊語で旗頭の意。転じてクラブを象徴するような選手を指す)」と呼べる存在は、絶滅の危機に瀕している。

しかし、消耗が激しく、実働年数の短いフットボーラーが「将来の保証」を求めたとして、誰が非難できようか。今後、ますます選手の行き来は激しくなるだろう。

だが、クラブに根付いた哲学やDNAは決して失われない。

バルセロナやオランダでは、1万年と2千年経っても4-3-3が躍動しているはずだ。

魂の在処は、人から人でないモノへ移り、いつまでも継承されていく。その端緒が、フォーメーションなのである。
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