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07 | 2019/08 | 09

雨をも焦がす激情のフィナーレ~UFFAチャンピオンズリーグ観戦記~ 

黄色とえんじを着飾ったフランス首都パリ・サンドニの夜は艶やかだった。

超満員のスタジアムには「幸運のチケット」を握り締めた者達の歓喜がこだまし、彼らの高まる鼓動と共鳴するかのように、スタジアム自体も小刻みに揺れている。

そして、短く刈り取られた鮮やかな緑の芝が、決戦の刻を待ちわびていた。

荘厳で勇ましいテーマ曲が音叉し、いよいよ選手達の入場だ。控え通路では人種入り混じる双方の選手が、口々に裂帛(れっぱく)の気合いを吐き出している。力と心とコンセントレーションを最高まで高めるために。

上り詰める気持ちが頂点を窺い始めた時、吐き出されるように両軍の選手が現れた。背負うライトは、いずれかにだけ微笑む栄光への道しるべか。


【バルセロナ】

GKバルデス

DFオレゲール、プジョール、マルケス、ファン・ブロンクホルスト

MFエジミウソン、デコ、ファン・ボメル

FWジュリ、ロナウジーニョ、エトー


【アーセナル】

GKレーマン

DFエブエ、トゥーレ、キャンベル、コール

MFジウベウト・シウバ、リュングベリ、セスク、フレブ、ピレス

FWアンリ


互いにほぼベストメンバーが顔を揃えた。「ほぼ」とは、バルセロナにシャビとメッシーが欠けているからだ。とはいえ、ジュリにはメッシーに無い経験と、縦に速いアジリティーがある。決して遜色はない。

リーガ・エスパニョーラ最終節で復帰を果たした大黒柱のシャビもスタメンから外れた。しかし、代役を務めるファン・ボメルは、攻守のバランス操作に長け、ダイナミックなプレーが持ち味のグッドプレイヤー。バラックをチェルシーに奪われたバイエルンが、後がまに狙っているという事実も、有能さを物語る。

一方のアーセナルは、今シーズン不振に喘いだキャンベルが立ち直る気配を見せ始め、一年通じて怪我に悩まされ続けたコールも間に合った。今夜もフォーメーションは、チャンピオンズリーグで好成績を導いた4-1-4-1。3枚の中盤を5枚で押さえ込み、アンリの双肩にゴールを託す──プレミアリーグで見せるパスゲームを捨てたのも、全ては勝つためだ。

スタンドから発せられる大量のフラッシュが、ピッチに聳え立つ22人と3人を、くっきりと浮かび上がらせた。ふと、今宵試験的に導入されたレシーバーを装備し、コイントスに臨もうとしている主審に目がいった。どことなく表情は堅い。スタジアムを埋め尽くす65000人に加え、数億、いや数十億人の視線がテレビを通じて注がれているのだから、無理もないか。

ざわめきが一段と増し、空気までも緊密化し中空へと収斂していく。はちきれんばかりの希望を孕み、ついに白球が歩み始めた。


立ち上がりから主導権を握ったのはアーセナルだった。中盤に並べた5人のミッドフィルダーが3人の相手を翻弄し、最前線を自由に動くアンリは、左へ右へ顔を出してバルセロナDF陣に揺さぶりをかける。

僅かに開始2分、右から正確なクロスがエリア内中央で待つアンリへ。決定的な位置で振り切られることを恐れたマーカーが、1歩下がった位置にいることを確認したアンリは、易々と絶妙の位置にボールをコントロールする。

彼にはこのスペースと時間で充分過ぎた。ワンタッチめで体を傾けシュート態勢に入り、右足を鋭く振り抜きにかかる。しかし、ここはバルデスの危機察知能力がチームを救った。素早い出足で距離を縮め、コースを塞ぐ。構わず振り抜かれる右足の前へ身体をいっぱいに広げて投げ出すと、ボールは辛うじて下半身に当たり枠外へ弾き出された。

世界最高クラスの技巧派フォワードが見せた驚嘆すべき危険性を前に、恐怖が宿る。

続く左からのCK。ショートコーナーから再びアンリがボールを受け取る。バルセロナディフェンス陣は誰もが交わされることを恐れ、近寄れない。必然的にチェックが甘くなった。瞬間、研ぎ澄まされた牙を剥く。エリア左からのシュートだ。ドスンという力強い砲撃音と共に生み出されたそれは、再び正確な軌道でゴールへ襲いかかったが、ここもバルデスが防いだ。

守勢に回ると見られたアーセナルが、勢いに乗ろうとしていた。中盤は球離れが良くポイントを絞らせない。パスワークが冴え渡る、良い時のアーセナルが顔を覗かせていた。両サイドハーフが流動的にサイドを換え、リュングベリの突貫力は対峙するオレゲールを手玉に取った。

ところが、一瞬の綻びがアーセナルを窮地に追い込む。

18分、オフサイドトラップをかいくぐってラインの裏へ抜け出そうとするエトーへ、ロナウジーニョから針の穴を穿つようなタイミングでスルーパスが通る。エトーの眼前を塞ぐのはGKレーマンだけだ。

たまらず飛び出すレーマン。これまで幾度となくチームのピンチを救ってきた彼に訪れた、いきなりの「見せ場」。だが、熱しやすく時に大胆過ぎる飛び出しで傷口を広げてしまう悪癖が、ここで、この大事な時に首をもたげてしまった。エリア外へ猛然と駆け寄り正対すると、右へ抜きにかかったエトーの足を刈り取るように──誰の目にもそう見えたはずだ──手を伸ばす。

なんとしても1点を防ぐ。

彼の頭に在ったのはきっとこれだけだ。本能が退場のリスクと先制点を天秤にかけ、結果、後者を選んだということ。

その身を挺したプレーを残酷にも無に帰したのは、エトーのスピードと意思を持たないボールの気まぐれだった。

交わされる寸前に何とかエトーの足を止めたレーマンだったが、接触でこぼれたボールは彼の手中に収まることなく転々と右へ流れ、なんとジュリの下に達した。ゴールは無人だ。ジュリは、ようやく間に合いつつあるディフェンダーの動きを見極め、守る者無き聖域へボールを滑り込ませた。

最悪の展開。

退場を選んでまで止めたかった1点を献上した上に、これから70分以上を10人で戦わなければならない。天国から地獄へと真っ逆様に墜ちて逝くジェットコースターに乗り込んだような気分とは、まさにこの事だろう。

甲高い笛の音が辺りを貫く。アーセナルへの「死の宣告」が届けられる瞬間だ。

しかし、神は寛大だった。決まったかに見えた得点は反故にされ、バルセロナへ改めて与えられた啓示は、ペナルティーアーク付近からの直線フリーキックと罪人レーマンの追放。ゲームを終わりにするには、まだ早い。

10人になったアーセナルは、ピレスを下げて4-4-1のフォーメーションに変わった。GKはアルムニア。地味ながら堅実なプレーには定評がある。レーマンのような「暴走」も見られない。

すぐさま彼は大きなアクションと怒声をかざし壁を構築する。こうした危急時は、冷静に指示を送るよりも喚く方が効果的だ。浮き足立つチームに活を入れると同時に、自らもアドレナリンを分泌させることで、ゲームのリズムに速やかに乗ることが出来る。

試合の行方を決める大事な場面。キッカーはロナウジーニョ。近すぎて狙いにくい微妙な位置がアーセナルに味方した。予想通り、落ちきらないボールはゴールバーの上を通過した。


10人対11人の戦いは、数的不利を抱えたアーセナルの危機感が良い方向に働いた。アンリ1人を前線に残して4+4の壁を自陣へ築き、的確なプレスで相手のプレーエリアを削る。難敵ロナウジーニョの自由を奪うことにも成功した。

徹底的な守備からカウンターに賭ける。

残された手段を貪欲に活かそうという意志が、彼らを走らせていた。

とは言え、守る側と攻める側では徐々に埋めがたい「差」が生まれる。いつしか流れはバルセロナへ傾き始めた。途中示されたポゼッションは59対41。バルセロナの猛攻がアーセナルを呑み込もうとしていた。

しかし、耐え忍ぶアーセナルは27分、エリア右でエブエがプジョールに倒されてFKを得ると、アンリが放った柔らかい曲線にキャンベルがオレゲールを完全に振り切ってヘディングシュート。高い打点から生まれた矢のように鋭い直線は、GKに反応の時間すら与えずゴール左へ突き刺さった。

アーセナル、先制。

後半、1点を守るために全力を傾注するアーセナルと追い詰めるバルセロナの闘いは、更に激しさを増していく。

49分、2人のDFの間をこじ開けるように抜け出したアンリがGKと1対1。しかし、ここもバルデスが好セーブで追加点を許さない。

攻めながら1点が遠いバルセロナは61分、ついに選手交代に踏み切る。ファン・ボメルに代えてラーションを投入し、71分には度々リュングベリに突破を許し、イエローまでも頂戴したオレゲールをベレッチに交代させた。

この治療が完璧に奏功した。

76分、エリア内で度々起点となっていたラーションの素晴らしいポストワークから、左サイドをぶち抜いて突っ込んできたエトーが、GKとポストの間に出来た僅かな隙を陥れて同点ゴールをゲット。

タイミング的にエトーの同点弾はオフサイドのようにも見えたが、あまりの速さと美しさを前に線審の視界が曇ってしまったとしても仕方のない、鮮やかなゴールだった。

ここにきて勢いが強まりだした雨粒のように、バルセロナの攻撃がアーセナルへ降り注ぐ。

そしてついに81分、最終章が幕を開ける。右に流れたラーションはベレッチからパスを受けると、そのままエリア内へカットインしてきたベレッチへ絶妙なスルーパスを戻す。受けたベレッチはエリア内を更に右へ切れ込み、ディフェンスを背負いながらバランスを保ち、角度の無いところから全身全霊を注ぎシュートを放った。

水しぶきを上げて加速したシュートはGKアルムニアの股をくぐり抜け、ゴール内へ栄光に架かる1点が到達した。

こうなると、1人少ないアーセナルに余力は残されていなかった。フレブに代えてレジェスを投入するも、バルセロナはテクニックに任せて悠々とパスを回す。ボールを遠くへ走らせ、持ち続け、触れることすら許さない。



あれほどフィールドを打ち据えた雨が止んだ。

14シーズンぶり、2度目の頂点がブラウ・グラナを迎え入れた瞬間だった。


──最後に、簡単に試合を止めず、的確な判断でゲームを活かした主審の名演技に賞賛を。



8時半には家に着き、夕飯を食べてから医龍を観て、現在はクロサギを観てます。
( ・ω・)∩

その間に携帯でひたすら文字を打ち、ついにチャンピオンズリーグ決勝の観戦記を書き上げました。さすがに最後はダレて雑になりましたが、勘弁してくださいwww
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