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05 | 2019/06 | 07

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さよならプリンス 

左へ、右へ、鮮やかな、そして彼らしさの象徴ともいえる「ド派手」なアーチがドームの空を駆け抜けた。

1本目の放物線が平日夜に集った熱心な野球ファンの元へと飛び込むと、一塁ベースを回った所で彼はやおらにヘルメットを脱ぎ去り、自軍のファンが陣取るライトスタンドへ深々と頭を下げた。

何の予兆か。呆気にとられるファンが、その真意に気付いた時、スタジアムは悲鳴と言葉にならない呻きで包まれた。誰にも予想出来なかった、まさかの引退表明。うっすらと滲む涙は、これまでの「演技」と明らかに違う、真実の重みを感じさせた。


俊足、強肩、堅守──

普段の「奇行」に常日頃から苦言を呈している野村克也氏すら、「投げる、走る、守るはメジャー級」と賛辞を惜しまない。

生涯打率は2割5分に満たないが、彼のバットは見せ場には必ず期待以上の満額回答を出してきた。

日本、アメリカ共に一軍デビューは初打席初ヒットを達成。日本人として初めて立ったワールドシリーズの舞台では、見事なホームランを放った。

一方で、これほど「画になる」シーンを創り出すことは、かの長嶋茂雄氏でさえ出来なかったに違いない。プレーで、プレー以外で魅せ続けた。

敬遠の球を打ってのサヨナラ勝ち、サヨナラ満塁弾を単なるサヨナラヒットに変えた謎の走者追い越し、オールスターゲームでのホームスチール…プレーで紙面を独占すれば、数々の着ぐるみパフォーマンス、空前絶後の「ターミネーター風」開幕戦入場でファンの目を釘付けにする。全てが球史に残る名劇場だ。


「野球人気復興のため」

彼は帰国後の選手生活全てをそれに費やした。今や札幌の大地に野球は深い根を張り、さらに確かなものへと広げつつある。偉大なる開拓者──その称号も相応しい。


「(誰かに相談は)ない。(決めるのは)常にひとりです」

決意は固い。今シーズン限りで赤の似合う男はグラウンドを去る。

「新しい夢を探していきたい。まったく決まってないけどね。豪快なことはしたいなと思っていますよ」

真っ白な歯に「悪戯っ子」のような笑みが浮かぶ。

次はいったい何をやらかしてくれるのか。期待は尽きない。

でも、今はただ、残り僅かなユニフォーム姿をしっかりと焼き付けよう──


ミクシィ内にいち早く公開した、朝の通勤電車内で30分をかけて書き上げました。昨夜は仕事でほとんど寝てなく、気分的にも最悪だったわけですが、新庄引退のニュースをサンスポの紙面で読むうちに、私も野球ファンの1人として何か言葉を捧げたいと思いました。

格別新庄選手のファンというわけではないのですが、彼のプロ野球を盛り上げようという姿勢や〝魅せる〟プレーは本当に素晴らしいものだったと思います。
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