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08 | 2019/09 | 10

運命の出逢い 

午後の雑踏は風邪気味の私には少し辛かった。
どかどかと行きかう人ごみの中を避けるように歩き続け、ようやく駅から駅へと繋ぐ通路は終着点に達した。

「しんどいなぁ。これはますます体調が悪化したかな…」

普段とは全く異なり急速に高まっていく鼓動を疎ましく思いながら、ホームへ出るために階段を駆け上がる。

しかし、覚えていたのはそこまでだった。
次に見た景色は、白く平板な天井だ。

「ん?」

一体全体何が起きたのか、ここはどこなのか。まさか出勤したのは夢だったのか――。

明らかに「さっき」までとは180度異なる自分の境遇が理解できない。

「まさか…」

焦る気持ちを抑えながらようやく思いついたのは、自分が気を失ってしまったのではないかということだ。

そんな経験を自分自身がするとは思ってもみなかった。頭の中は空転するばかりで、まともなイメージが描けない。
酒をどんなに飲まされても大丈夫だった自分に、よもやそんな事態が生じたなんて信じられるはずもない。

「気が付きました?」

背後から投げかけられた言葉に、思わずビクッと体を震わせる。

「誰?」

我ながら馬鹿げた答えであり、こうして今改めて振り返ってみると何とも失礼な話だが、人間というもののは動転している時に論理的思考や仁義礼知で包まれた返事など出来ないらしい。思わず口に出たのは、どうしようもないその一言だけだった。

「『誰?』だなんて、随分な答えじゃない?誰がアンタみたいに図体のデカイ男を引っ張ってきたと思ってんのよ」

その声が女性のものであることに今更ながら気付き、ますます混乱のどつぼに嵌る私を一向に構いもせず、やれやれといった口ぶりで声の主は私の正面に回り込んできた。

意外にも、と言っては悪いが、人助けをするような顔には見えなかった。どちらかといえば夜の仕事が似合いそうな、そんな「整いすぎた」顔がそこにはあった。

大きな黒目が意志の強さを感じさせ、亜麻色の髪は肩から引力にひかれるように綺麗な直線を描いて流れ、厚ぼったい唇とその脇に控える小さなほくろが妖艶さを醸し出している。

(綺麗なヒトだなぁ…)

まるで他人事のようにぼんやりと思うが、状況が状況だけに安易な想像をする暇は無い。

「次に聞かれるのは『ここはどこ?』『なんで?』ってとこかしら。ここは私の勤めている病院のベッドで、なんでここにいるのかは…私の目の前でアンタがいきなり倒れたから、そこから近い病院、つまりはうちの病院に引っ張ってきたの。単に立ち眩みか貧血によるものだと思ったから、救急車を呼ぶのもどうかと思ってね」

「まぁ、熱は結構あるみたいだけど、暫く休んでから帰りな」

矢継ぎ早に飛んでくる彼女の言葉に合いの手を挟む間もない。それでもようやく状況を理解できたことで幾分脳内の機能が動き出した。

「そうだったんですか…。本当にすいません、ご迷惑をかけて。わざわざありがとうございます」

「動けるようになったら言って。もう診察時間はとっくに終わってるから、みんな帰っちゃって残ってるは私だけだからさ」

普段時計をしない人間な上に携帯はコートのポケットに入っている。今の時間は分らないが、外から差し込む光の弱さからいって、もう夕方だろう。
土曜日の病院はだいたい午前中で終わる。とすれば、彼女は帰り道を引き返して私を連れてきてくれたってことだ。

「帰るとこだったんですよね?その後に用事とかもあったんじゃないですか?台無しにしちゃって申し訳ないです」

「そんな何度も謝んなくて良いよ。まぁ、多少はびっくりしたけど、なんて言うかこういう場所で働いてると日常茶飯事だから。別に帰っても特に何かあったわけじゃないしね~」

返ってきた彼女の言葉からは愚痴めいたものや義務ゆえの淡白さが全く感じられなかった。元々「気風の良い」姉御肌のヒトなのかもしれない。きっと同性にも異性にも頼りにされるタイプだろう。

素直に凄いと思った。

そして、稀に見る「異人」への探求心とちょっとばかりの個人的な興味を持って、彼女へ次々と言葉を投げかけた。揺れる視界に邪魔されないように、彼女の視線を意識しないように目を瞑りながら――。

「病人なんだから、大人しく寝てなさい」

なんて事を言われるのだけを恐れていたが、不思議と彼女は会話を途切れさせることなく付いてきてくれた。話が合ったのもあったが、きっと私と同じように彼女も「話好き」なのだ。合いの手の入れ方、突っ込みとボケの加減、全てが小気味良く進んでいく。

ふと目を開けると、いつの間にか彼女は私が寝ているベッドの端に腰を掛けていた。顔立ち以上に整った身体が描き出す曲線は妙に艶(なまめ)かしく、思わず、視線だけを下から上へと嘗め回すように動かす。

ゆっくりと体中をなぞりながら顔に辿りついた私の視線を、黒目がちな彼女の目が迎え入れる。こちらをじっと見据えて離さない彼女の視線は、「君の邪な考えの全てお見通しだぞ」と言っているような気がして、慌てて目を閉じる。

「変なヒト」

そういって笑い出した彼女は、軽く私の身体を叩いて立ち上がった。

「ヒトをじろじろ眺める元気があるなら帰れるでしょ。早く家に帰ってゆっくり休みなさい」

見透かされていた。
いなされる自分がいる。
これまで感じたことのない感覚が、ますます私のココロを奪い去っていく。

延々と続いていた2人の会話の密度と感触――それに寄りかかるように、口をついて出たのは誘い文句だった。

「予定無いなら、食事でもどうですか?」

あまりに唐突で、露骨な誘い文句。普段のノリで済ませれば、なんてことのないジョークになる言葉が、この時ばかりは震えていた。それが余計に恥ずかしくて。

「ほらっ、迷惑かけちゃったし。そのお礼に」

もどかしいぐらいに上手く回らない舌を誤魔化しながら、言葉を足していく。
一期一会。別に拒否られようが何ら問題ないことが、私を大胆にさせたのかもしれない。

「へぇ~」

しげしげと私の顔を見返すと、

「アンタってそんなこと言うタイプに全然見えないのに、意外に大胆なんだね~。その勇気に免じて付き合ってやるか~。話してて面白かったし。でも、その前に体調整えてからだな。私も〝一応〟病人を連れ回すようなことを出来ない立場ですから」

と言って、どっかにあった紙の切れ端に連絡先を書き、それをこちらへ放り投げた。

「自分で一応とか言ってちゃ世話無いぜ」

なんて毒づきつつも、切れ端をポケットの中へ仕舞い込んで立ち上がる。

「片付けとか戸締りして帰るから、アンタはとにかく早く帰って休むんだよ。酷いようだったら病院行くこと」

外で待っている心積もりだった私に釘を刺すような一言が届いた。

(まったく、敵わねぇな)

どうやら一枚も二枚も相手は上手のようだ。たまにはそれも悪くないが。

辺りは既に真っ暗になっていた。会社を出てから6時間以上が経っている。今日は4月1日、エイプリルフールだ。嘘のような一日が、まさか私を待っているとは思わなかった。














































なんですけどねwww
ヽ(´ー`)ノ

こんなん書いてる暇あったら他のことをしろよなと。
(;・∀・)

ようやく家に着きましたとさ…。
(;´Д`)
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コメント

こんばんは

どうもはじめまして☆
って実は初めましててではありません。
純MEN応援団の一人で、いつも楽しく試合を観戦させてもらってます。
お仕事大変そうですね。出張お疲れさまでした。
運命の出会い…情景が鮮明に思い浮かびました。なので最後の最後まで騙されていた私。。。でも最後はなんだか楽しい気分になりました。
また遊びに来ますね★

いつもどうもです♪

ほとんどの試合で観に来てくれてますよねぇ。
いつも「偉いなぁ」と思ってますよ。

私のブログは最近ゲームのことばっかり書いてますが、たま~に暗いorふざけた事(主に色濃い沙汰について)を書いてます。

〝アングラ〟感溢れる根暗なブログですが、ちょっとした驚きをプレゼントできたなら幸いです☆

私のお勧めサイトとして教えたら早速書いてますね~にぼし君も。
ええ、私もノマノマイェイにデスティニーな出会いがあったのかと騙されました!
夫婦揃って騙されたね(笑)

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