FC2ブログ

07 | 2019/08 | 09

【名馬達の軌跡・奇跡~ビワハヤヒデ~】 


~偉大なる兄弟、朴訥なる兄に捧げる賛歌~


圧倒的な未来の可能性を見せつけて菊の王座に就いたとはいえ

これまでの彼の馬生はいつも引き立て役だった。

名脇役─。そう呼びたくなるような、ドラマも生んだ。

若き有望株の未来を閉ざした2度の敗戦

「悲願」「執念」という名の見えざる力に阻まれた東京優駿

「奇跡の復活劇」を演出した有馬記念での火花散る叩き合い

その他馬より遥かに大きい白顔に似合わず

彼はどこか慎み深く見えた

しかし

トレードマークの赤いメンコを外し

酷暑に耐えて研鑽を積み重ね

迎えた充実の刻は

彼を裏切らなかった──



年が明け

ひとつ年輪を重ねた彼の走りは

不動にして不沈

まさしく絶対的な王者の領域。

京都記念

天皇賞

宝塚記念

オールカマー

その様、無人の荒野を行くが如し。

スマートで

万全で

当たり前の

圧勝劇──



一方

彼の一つ下には弟在り。

シャドーロールという

見慣れぬ装飾を施された
漆黒の怪物は

暴力的な強さを見せ付けて

いともたやすく

天下平定を成し遂げた。

暴君たる凶悪な猛弟と必然完璧なる偉兄──

いつしか人々は語り出す

兄と弟

いったいどちらが強いのかと──

そして

決する舞台は

冬枯れの中山

そう

誰もが

叶うと

夢を見られると

信じていた。



だが

共に「最強」を背負った兄弟は

永遠に邂逅を果たすことはなかった──

空が秋色にすっかり染めぬかれた天皇賞に

訪れた悲劇

崩壊──

「神賛」伝説へ挑み続けた連対記録は

終止符が打たれ

ここに

「競走」馬生は

終焉を迎えた。

16戦10勝15連続連対

この不滅の記録を上回る息子の誕生を

見ずして

彼はひっそりと

種牡馬を引退した――



ビワハヤヒデはリアルタイムで見ることの叶わなかった名前しか見ていない馬です。そして、心の中に永遠に残る大好きな馬の1頭です。面白いところでは、無事是名馬の代名詞的存在になりつつあったビワハヤヒデがクロレラを常食していたことで、厩舎関係者からの問い合わせが続出し、売上げが伸びたという裏話もあったりします。それから、バナナが好きだったってのも愛嬌があってイイですよね。

「ウイニングポスト」等で有名な「光栄(KOEI)」がまだ様々な書籍を出している頃に引退した競走馬の歴史を綴った「名馬列伝」というシリーズを出していたのですが(今は亡き大川慶次郎氏も執筆陣にいました)、私がそのシリーズで1番最初に買ったのがビワハヤヒデのものでした。

特に理由はなかったと思います。ただ、競馬というものを知ってからの私はひたすら古の歴史を紐解くことに没頭しており、その中で直近の名馬、しかも兄弟で空前絶後の成績を残した2頭に興味を持ったのは間違いないです。そして、成績のわりに弟のビッグインパクトに押されていたビワ兄貴に――いわゆる「判官贔屓」ってヤツでしょうか――惹かれました。それが動機らしい動機ですね。

種牡馬入りして以降、ターフを賑わすような名馬を生むことはありませんでしたが、サンエムエックスを始めとして、個性的かつそれなりの成績を残す馬を輩出していただけに、今年1月に入ってきた「種牡馬引退」のニュースは哀しかったです。

日本馬の飛躍的なレベルアップは、こうした種牡馬の淘汰の末に成し遂げられたという一面を否定するつもりはありませんが、偉大なる名馬の跡継ぎを楽しみにしているはずの一般ファンと、馬を持つ馬主達の間に冷たく横たわる壁が、どこか寂しい気もします。

スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

(コメント編集・削除に必要)
(管理者にだけ表示を許可する)

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://guilty4betrayer.blog6.fc2.com/tb.php/220-29f0ab5b