08 | 2017/09 | 10

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【FM】ウンターハヒンク日記~序章~【2012】 

「うちにも日本人が来るらしいぞ!!」

携帯電話から飛び込んできた音声は、クリアとは程遠く、単語の端々が割れに割れていたが、逆にそれが彼の興奮ぶりを浮き彫りにしていた。

シーズンオフのこの時期にしか味わえない、優雅な午睡を邪魔された怒りは瞬く間に消え去り、、頭の中で「日本人が来る」という単語を反芻する。

正しくは「日本人フットボーラーが来る」か。

今や、ドイツでは当たり前になった感もあるニューズだ。

昨季の前半戦にドルトムントでまばゆい閃光を放った香川を筆頭に、シャルケのUEFAチャンピオンズリーグ・ベスト4とDFBポカール制覇に貢献した内田、そのユーティリティ性が高く評価される長谷部、冬の移籍で加入するなりシュツットガルトのレギュラーを奪取した岡崎、アウクスブルクの1部昇格の立役者・細貝ら、ドイツでプレーする日本人は続々と増えている。

今夏も、さらに数人が来独するようだ。青い侍とドイツの蜜月は、なお続くだろう。

だが、私が休暇を謳歌しているのを知りながら電話をかけてきた男が「悪友でありプロフットボールクラブの関係者」、「うち」が「SpVggウンターハヒンク」を指し示すとなれば、話は変わってくる。

確かに、ウンターハヒンクは過去に1部――言うまでもなく、ブンデスリーガだ――に所属していた時期がある。とはいえ、それは99-00シーズンと00-01シーズンの僅か2季に過ぎない。

2部に落ちた01-02シーズンには、連続降格という不名誉な記録も打ち立てた。その後は、時折、昔日の熱量が乗り移ったかのようなパフォーマンスを見せ、何度か2部に返り咲いたものの、いずれも1部昇格への足場づくりは果たせず、3部に逆戻り。ここ数年は、3部リーグが主戦場だ。

加えて、近年は資金繰りに苦しみ、昨季は破産直前にまで追い込まれた。スポンサーの助力により、11-12シーズンに向けたライセンスは発行されたが、予算は大幅に縮小。130万ユーロという金額は、日本の2部クラブよりも少ない。つまり、いつ終焉を迎えても不思議ではない状況だ。

かつての快進撃は、やがて美しい記憶から御伽噺へと姿を変え、いつしか伝承の中だけに生きる存在になってしまうかもしれない。

それは、人口たった2万人余の田舎に根差すクラブの宿命でもある。

そんな僻地に、なぜ日本人がやって来るのか。酔狂にも程がある。疑念を拭えず、詰問の合いの手を挟もうとした寸前、一つの可能性に気付き、思い留まる。

Jリーグを追い出された選手か、アマチュア選手ではないだろうか、と。

前者では09年に2部のデュッセルドルフにやってきた結城耕造が、後者ではアーセナルの宮市亮やサバデルの指宿洋史の名が浮かぶ。

特に最近は、Jリーグを経験せずに海外へと渡る日本人が少なくない。環境も給料も決して良いとはいえないドイツの3部リーグだが、上を目指す若手の登竜門としては機能している。恐らく、こちらだろう。

そう独りごちて、「日本人と言っても、どうせ若手だろ?今の経営状況では、それ以外に考えられないしな。それで、ポジションはどこだ?」とスマートに聞き返す。無駄なやり取りは、貴重な休日を減らすだけだ。

しかし、答えは想像だにしなかった角度から撃ち込まれた。

まるで、ユーロ88でファン・バステンが決めたボレーシュートのように――。

「そんなことで、こんなに取り乱すかよ!選手じゃない、監督なんだ!」

「はあっ?!」

吃驚によって散り散りになった言葉は、それだけになって口を突いた。

意味が分からない。「選手」と「監督」という2つの単語は、子供とて聞き間違えるはずのないくらいに別物だが、本気で誤用を疑った。騙すつもりにしても、あまりに低レベルだ。

沸々と立ち上る怒りに任せ、「おい、嘘をつくならもっと頭を使え。日本人が監督だって?そんな与太話に付き合うくらいなら、食べ途中のチップスが残り何枚か数える方がマシだ」と詰(なじ)る。

「違う!嘘じゃないんだ。お前は、うちが経営難で高給の監督とコーチを切ったのは知っているよな。その後任に、4部リーグで話題になっている日本人監督を選んだらしい」

4部リーグで話題になっている日本人監督―。そういえば、6部リーグから日の出の勢いで4部に昇格してきたクラブがあるというニュースは耳にしていた。だが、その指揮官が日本人だとは知らなかった。

「まさか、日本人は日本人でも監督だったとは…」

絶句する俺に、悪友は「信じられないのは一緒だ。事実だと分かっていてもな」と本音を明かす。お調子者で、会話の7割を嘘で塗り固めるようなヤツが、今ばかりは神妙だ。

もっとも、根は真面目なのだ。そうでなければ、激務で薄給の3部クラブの広報など務められはしない。

少しだけ感心してから、フルスピードで頭を仕事モードに切り替える。驚いている場合ではない、前代未聞のニューズが手のうちにあるのだ。

「それで、正式な発表はいつなんだ?今日なら、すぐに準備をして向かうし、明日以降ならうちが独占で書いていいのか?」

と尋ねる。俺にとっては特ダネの方がありがたいが、ヤツはプライベートと仕事を混同しない。今日、記者会見があるのだろう。

「それ、答えが分かっていて聞いているよな?もちろん、特ダネにはしてやれない。3時間後に、クラブ側が記者会見を開くからな。ただ、条件によっては独占インタビューの機会をプレゼントできるかもしれない。条件というか、お願いなんだけどさ」

瞬間的に嫌な予感がした。ヤツの“お願い”は、いつだってロクなもんじゃない。軽く両手の指に余る数の苦い記憶がフラッシュバックした。

それでも、単独インタビューは魅力的な提案だった。欧州では他に例を見ない、日本人監督が率いるプロクラブ。話題性は十二分にある。ヤツは、友人であるとともにジャーナリストでもある俺には断れないと踏んで、誘導しているのだ。悔しいが、了承せざるを得ない。

とはいえ、すんなり従うほど“甘ちゃん”ではない。これは友達付き合いでなく、ビジネスなのだから。あくまで、需要と供給はフィフティ・フィフティ。言いたいことは言わせてもらう。

「“お願い”は聞いてやる。ただし、単独インタビューは1回でなく“定期的かつ優先的に”だ。どうせ、それくらいの便宜は図ってもらえる“お願い”なんだろ?」

不遜な物言いに、ヤツは「敵わないな~」と苦笑するが、その悲哀を表す言葉とは裏腹に、全く困っている雰囲気はない。それは、呑気な声色からも明らかだった。

「お願いってのは、記者会見で使う資料なんだよね。日本時代の経歴も記載したくて、資料は手に入れたんだけど、日本語で書かれていてさ~。うちには日本語が分かるスタッフはいないし、雇う暇もなかった。お金もないしね。監督はドイツ語を自在に使いこなせるらしいけど、だからって頼めないでしょ。どうしようか悩んでいた時に、『あれっ、身近に日本語に精通した人間がいるぞ』って、気付いたわけよ」

「これから草稿と資料をメールで送るから、上手く仕上げて返信してね~。今後も、何度かお願いするかもしれないな~。ほらっ、日本からマスコミが大挙して訪れるかもしれないし。その時は、窓口になってね。協力してくれたら、ちゃんと恩返しするからさ」

“お願い”の内容によっては、聞くだけ聞いて適当にあしらおうかとも思ったが、悪くない。むしろ、クラブとのパイプを太くする好機だ。幸い、中田英寿のプレーに魅せられて日本のフットボールに興味を持ち、日本語を学び始めた自分は、よほど難解な表現でない限り、読み書きには不自由しない。

俺は「たまには、まともなお願いもするんだな」と皮肉を投げてから、「問題ない。時間もたいしてかからないだろう」と受諾する。

それを聞いてヤツは安心したのか「良かった~。本当に助かったよ。じゃあ、会見場の最前列を確保して、質疑応答の時には必ず指すようにするからね」と言い残し、電話を切った。

日本人監督か―。

最近、良い話題のなかったウンターハヒンクに、降って湧いた“スキャンダル”。彼の手腕はどれほどか。チームはどう変わっていくのか。急速に胸が高鳴るのが、はっきりと感じられた。

---------- キリトリ -----------

Coming Soon!

Unterhaching-info_20120314000621.jpg

ジャーナリスト視点でのプレー日記を予定しております。
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コメント

新しい試み

ジャーナリスト視点とはいいですね。
自分のプレイを第3者の目で評価するというのは難しそうですが、
新しい日記のスタイルとしてどんなものになるのか楽しみにしています。

FM内でみると1860Munchenやらバイエルンやらがライバルになっていますが、
プレイではその辺のチームと伍する時代を作ろうということでしょうかw

こちらも日記に向けて少しずつゲームを進めています。
おたがいがんばりませうw

Re: 【FM】ウンターハヒンク日記~序章~【2012】

とてもおもしろそうなシリーズになりそうな予感。
現在1860Munchenでまったりプレーしている私にとっても、ライバルの同行は気になります。ぜひ、のし上がってバイエルン(だけw)をフルボッコしてください。

Re: 【FM】ウンターハヒンク日記~序章~【2012】

監督、日本人選手を獲得される予定は?というセリフが聞こえてきましたw
一風変わった視点からの日記ですので大いに楽しみにしています。

Re: 【FM】ウンターハヒンク日記~序章~【2012】

これはなかなか面白そうな試みですね。
ドイツ3部での手腕、楽しみにしておりますー

トライしてみます

>Rakkyo様

プレー日記らしくない、普通の「読み物」として通用するように、書いていきたいと考えております。恐らく、好みが分かれるとは思うのですが、情報をむしろ隠してしまい、少しずつ明らかにしていく形で、起伏をつくれたらなと。厳しい意見も、お待ちしておりますw

バイエルン州に位置しているので、1860ミュンヘンやバイエルンがライバルになります。とても彼らと競えるような規模にはありませんが、FM2013の最終パッチが出るまでに、マイスターシャーレを獲得してみせます(言い切ったw

お互い、良いプレー日記を長く続けられたらいいですね~

ご無沙汰しております

>ごり様

ここでは久しぶりですね。1860ミュンヘンでプレーされているとのことで、以前にプレー日記を書いていた人間としては、共感を覚えます。

バイエルン州といえば、やはりバイエルンがあって、1860ミュンヘンが続くというイメージですが、ウンターハヒンクもあるんだぞという展開を目指しますね。目標を高く持って、じっくりと続けていきたいと思っています。

ありがとうございます

>ペンギン様

物語としても成立する、FMプレー日記の枠を越えた内容にできればと考えています。

企画倒れにならないよう努力しますので、よろしくお願い致します。

どうもです

>mikan様

プレー日記、いつも読んでいます!

企画倒れになり兼ねない、文章ばっかりになってしまいますが、よろしくお願い致します。

お互い、プレー日記は長く続けられたらいいですね~

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