09 | 2017/10 | 11

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1人と1頭のリベンジ 第76回東京優駿 

挫折の苦味を知り、逞しくなった“新時代の子”に、栄光のシャワーが降り注いだ。第76回東京優駿。3年前に生を受けた瞬間からスタートした、7768頭による“マラソン”を、先頭で走破したのはロジユニヴァースだった。

一敗地にまみれた天才の鮮やかな復活劇だ。デビュー戦からいずれも先行押し切りの“模範解答”で無傷の4連勝。才気溢れる走りが高く評価され、皐月賞では断然の1番人気に推された。しかし、4コーナーで早くも手応えを失うと、14着に惨敗。手綱をとった横山典弘騎手が首を捻り、自虐的な笑みさえ浮かべる不可解なレースぶりで、初めて他馬の後塵を拝した。

“天才ほど脆い”は、人馬を問わない共通項だ。1度の挫折が致命傷となり、そのまま表舞台から消え去っていった俊英は枚挙に暇がない。ロジユニヴァースも、皐月賞の“後遺症”に苦しんだ。調教の動きは鈍く、状態が一向に上がっていかない。1週前追い切りを終えた横山騎手も「見て、自分で判断して勝手に書いていい」と、いつになく歯切れが悪かった。

ただ、体重が戻ったのは好材料だった。前回のマイナス10キロから16キロの増加。スタッフの献身が実り、最低限の立て直しには成功していた。道悪も、馬場の渋ったラジオNIKKEI賞、弥生賞で強さを見せた彼にとっては望むところ。数日前から降り続く雨は、まさしく“恵みの雨”と言えた。ファンの支持は2番人気。前走の着順で見限られてもおかしくなかったが、復活に賭ける“想い”は深く強く、そして多かった。

メインスタンド前で北島三郎が高らかに国歌を唄い上げる。「晴れ男」を自認する大御所の声音に弾かれて、晴れ舞台を覆う無粋な雨が退散していく。次いで金管楽器で象られたファンファーレが府中の杜に響き渡り、11万1891人の大観衆に熱が灯る。競馬界の大晦日にして元旦、東京優駿の開演だ。

40年ぶりという不良馬場は、さながら2400メートルの田んぼだった。そぼ降る雨を満杯に吸った芝が脚元に絡み付く。その加重を一歩ずつ踏みしだきながら、質量数百キロの疾風達が遮二無二前へと突き進む。

ロジユニヴァースは、絶好のスタートを切って内ラチぴったりの3番手につけた。眼前には、皐月賞で共に苦杯を舐めた5番人気のリーチザクラウン。皐月賞馬のアンライバルドは後方から4~5番手にポジションを取った。1000メートルの通過タイムは59秒9。この馬場にしては速い時計を、NHKマイルCとの変則2冠を狙うジョーカプチーノが先導する。だが、それも4コーナーまで。失速するジョーカプチーノと入れ替わるようにしてリーチザクラウンが先頭に躍り出る。その内に、最短距離を回って押し上げてきたロジユニヴァース。1頭分の僅かな隙間に滑り込むと、温存していた末脚を炸裂させる。そこからはリーチザクラウンとの我慢比べ。武豊と横山典弘、同期にして東と西のトップジョッキーが火花を散らす。

叱咤の鞭に応えたのは、ダービーを4勝し「何度でも勝ちたい」と目を輝かせる武豊のリーチザクラウンでなく、「30年かけてでも勝ちたい」と初勝利に執念を燃やす横山典弘のロジユニヴァースだった。残り400メートルを切った辺りで抜け出すと、最後まで力強く伸び続け、リーチザクラウンに4馬身の差をつけて栄光のゴール板へ飛び込んだ。

横山典弘騎手はデビュー24年目、15回目の挑戦で初勝利。過去に2着が3回あった。メジロライアンでの2着で非難を浴びたこともあった。当時22歳。今と変わらぬ歯に衣着せぬ発言を貫いていた彼は、ここぞとばかりに叩かれた。それから19年――。

派手なガッツポーズは無かった。インタビューでも「とにかく必死だった。ゴールまで本当に長かった」と苦闘を振り返った。しかし、“あの時”と同じようにヘルメットを脱いでスタンドへ頭を下げた彼の表情は、謝罪でなく喜びと感謝に彩られていた。彼もまた“挫折”を乗り越えたのだ。1人と1頭の天才が果たしたリベンジ。東京優駿の歴史に、今年も新たな物語が加わった。

---------- キリトリ -----------

※終盤がちょっと尻すぼみになった感じがして納得いかないので、改めて加筆・修正するかもしれません。

※文章家として失格ですが、解説すると「“新時代の子”=ネオユニヴァースの子」、横山騎手のヘルメットのくだりは、ライアンで負けた時には謝罪のために頭を下げていたのが、今回は喜びと感謝で頭を下げていたということです。

※ちなみに予想は近年になく大外れ。
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コメント

競馬の本質

 今年のダービーは近年になく「いいダービー」だったなと思います。各馬歩くようなスピードで転がりこむようにゴールする様はまさにマラソンのそれであり、死力を尽くした勝負に立ち会えた事に大きく感情を揺さぶられました。「スマートさ」を競う風潮にある近年の競馬にあって、しかしやはり「馬」をくらべているのだという事を再確認させてもらった事で、失いかけていた情熱を取り戻せたような気もしています。
 予想はヒモを取りこぼすというお約束を炸裂させ(笑 本来悔しさしか残らないレースのはずですが、それを補って余る満足感があったようです(苦笑

 ロジといえば私は彼にベガを重ねてしまいます。
 脚に不安を抱えている事からの連想だけでなく、悲運の天才を思わせる境遇と才能のギャップや「東京は不向き、距離が長すぎる」とレース前に騒がれた事などもその思いを一層裏付ける要素になったのかもしれません。
 これから先、一戦でも多く無事な競走生活を送ってくれる事を願ってます。

素晴らしいレースでした

>放生月毛様

ここ数年は「あっさり」とした淡白なレースが多かったですからね。骨太なダービーを見られて、一緒に観ていた相方も感動していました。まるで生命力を放散しながら走っているかのような力強さ、迫力は、競馬の奥深さを表していましたよね。

予想は惜しかったようで。私は大外れも大外れでしたが、久々に「負けて悔いなし」でしたw
(;^ω^)

ロジ=ベガですか。書いて頂いた内容を読むと、「なるほど」と頷けます。彼女もまた、出生時のハンデや色眼鏡と戦いながら栄光を掴みましたよね。ロジも、とにかく無事で夏を越して欲しいと思っております。

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