07 | 2017/08 | 09

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プロフットボールクラブが消えるということ~後編~ 

※前編に引き続き、超ワールドサッカー内の神尾光臣氏のコラムより。

「ジョベントゥ・ジャッロロッサ」1980年創立のサポーターズグループで、メッシーナのゴール裏で一番の影響力を持っている。試合ではホットな応援を繰り広げる南部のファンらしいグループ。その分、ブーイングも容赦なく、歴代の監督やフランツァ会長に対する抗議を良く行っていた。その本部は、メッシーナ港の一見何の変哲もないバールだった。そしてマルトラーナ氏は、そこの亭主である。

「今の状況か?見ての通りの悲惨な状況さ。プロクラブはこの街から消えた」。ただ、彼らの嫌いなフランツァ氏が経営から一歩退くということで、ある意味望んでいた姿なのではと、やや意地悪な質問をした。「それはそうなんだが、ただクラブがプロリーグの舞台から撤退したからな。やはりこれは本当に残念だよ。我々サポーターも、小口の資本提供や年間指定席で協力すると申し出たんだが、耳を貸してくれなかった。フランツァ?我々が反抗し続けたのは、ヤツがフットボールをまるで分かっとらんからだ。ジョルダーノ監督とかバレンティーニ強化部長とか、実績の怪しい人物を引っ張ってきたりするから・・・」。

その一方、北部からの資本家は訪れなかったし、最後の頼みの綱であったカッツァニガ氏もあっさり引いた。マルトラーナ氏は失望を露にした。「地元の資本家にやってもらうのが理想的だと我々は考えている。だが誰もフットボールに興味を示さん。北部の人間は地元に関心を示さないんだ。今回だってそうだろう。メッシーナは交通の要衝で、2010年には海峡連絡橋の工事だって始まる。地元にはあれだけでかいスタジアムもある(サン・フィリッポは最大4万人収容)。にもかかわらず、奴等は投資を惜しんだ。成功にはそれなりのリスクを冒さないといけないことは知っているだろうに」。

無視される地方だが、彼らは彼らなりの文化を築いている。ひとしきり話を聞いたあと、マルトラーナ氏はバールの上の部屋に自分を通してくれた。そこには綺麗に整った集会場があり、ゴール裏の数々のサポーターの写真が飾ってあった。気は荒いが、最近各地で問題となっている悪質な暴力行動に魂を売る雰囲気はなく、古きよき「ウルトラス」の姿を守っていることを彼らも誇りにしている。

フットボールの商業化でマーケットが拡大する中、そうした底辺のファンの存在はどんどんマイナーになっている。セリエA昇格の際は地元で急激にファンが増えたが、弱体化した時に関心を失った。バールにいたサポーターの一人は、「クラブ存続デモの時に、人数を動員できず、僕らの声を伝え切れなかった後悔もある」と語る。

マルトラーナ氏と昔話になった。「彼が日本でプレーしていたのはどこのクラブだったかね?メッシーナでやってた時は3ゴールくらいしか決めんかったよ。その代わり、チャンスメーカーだった」。日本との縁は柳沢や小笠原だけではない。メッシーナがセリエC1やセリエBにいた頃、ここには元磐田のイタリア代表FWスキラッチがいた。下部カテゴリーを蔑ろにすれば、こういったこともなくなるわけである。TV中継の一括放映権すらセリエBにはつかない。FCメッシーナの企業努力の不足を責めることもできるが、それだけではどうしようもない面もあった。

メッシーナがセリエB登録取り消しを受け入れた7月14日は、ロナウジーニョのミラン移籍が決まった日。この日、ベルルスコーニ会長の一言で移籍金が約5億9000万円つり上がったと伝えられるが、この額でメッシーナの抱えていた借金は帳消しにできたのである。この日、夢を潰されたメッシーナのファンの数は、ロナウジーニョ獲得で盛り上がったミラニスタに比べれば遥かに少数だ。だからといって、その存在が無視されていいとは思えない。

なお、プロクラブとして登録抹消されたメッシーナだが、組織としては死んでいない。規模の縮小は避けられないが、資本を募ってアマのトップカテゴリーであるセリエDからの再出発を目論んでいる。しかしファンは「フランツァの息のかかったクラブは認めない」という。アウグーリオSDは「ファンとの関係が修復されるには長い年月がかかるだろう」と覚悟を決めている。『弱者が痛みに耐える』という現実は、言葉以上に厳しいものである

---------- キリトリ -----------

FCメッシーナの事実上の消滅を巡る一連の流れを紹介させて頂きました。皆様には、どのように伝わり、響いたのでしょうか。日本人との縁も少なくないクラブが、いつの間にか泡のように消えてしまう。きっと、知らない人も沢山いることでしょう。柳沢や小笠原の過去を追い、振り返った時にメッシーナという存在はない。この怖さ、切なさを日本で起こさないためにも、総じて赤字体質、地元意識のまだまだ希薄なJクラブには一層の企業努力を望みたいものです。
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