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06 | 2007/07 | 08

FM2007日記・Paulista FC~飛翔 笠井健太物語~ 

○プロローグ○

小学校時代、彼は父親の仕事の関係でカナダのトロントに住んでいた。いつからか――それはあまりにあやふやで不確かだが、少なくとも物心がついた頃には、白と黒に染め分けられた球体は、彼にとって最高の友達になっていた。やがて彼は地元のアマチュアクラブへ入団する。中学3年の夏休みには、ブラジルの名門サントスの少年 チームに短期留学もした。帰国後は袋井高(静岡)へ入学。FWとしてプレーしたが、残念ながらJリーグのクラブから声がかかることはなかった。

しかし、彼はプロになる夢を諦めなかった。サントス留学時代に知り合ったブラジル人コーチを頼り、アメリ カ・ダラスのサッカースクールへ渡る。その後は、ブラジルに渡り複数のプロクラブの入団テストを受け、ついに2005年初め、サンパウロ郊外に本拠を置く中堅クラブ、 パウリスタのテストに合格した。

与えられたポジションは右サイドバック。FWとしてプレーすることに未練がなかった訳ではない。未経験故の戸惑いや難しさもあった。けれども、「プロとして生きていく」という唯一無二の信念の前で、それらは些末な事象に過ぎなかった。日本人特有の確かな基礎技術、豊富な運動量とスピード、そして堅実で勤勉な守備を持ち味に、右サイドを駆け上がり積極的に攻撃へ参加する。当初は懐疑的だったブラジル人達の見る目は、日を追うごとに変化していった。

ついに2006年初頭、彼は〝外国人選手〟としての苛烈な競争を乗り越え、悲願のトップチーム昇格を掴み取った。

また同時に、彼は「第二のカズ」になりうる資格を手に入れたのだ。

これまで、ブラジルには「第二のカズ」を夢見る数千人もの日本人留学生がやってきた。だが、その多くは、尋常ならざるレベルの高さ、言語や習慣の違いを前に、身も心もズタズタに裂かれ、消え去っていった。「王国」の壁は、日本人にとって絶望的なまでに高く険しい。打ち破った彼の未来へ希望は膨らむ。雛はやがて龍となるか、鳳凰となるか、未来予想図は無限大だ。

もちろん、彼はまだ何も掴み取っていない。レギュラーポジションも、タイトルも。「第二のカズ」を背負うのは、為すべきことを為してからだ。今は、踏み出したその一歩を確かなものに変え、一歩一歩休まず進んでいくだけでいい。

そのために、私はやってきたのだから――。
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