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06 | 2007/07 | 08

或る無能監督の憂鬱 

スモールクラブを昇格させることに執念を燃やし、独自の哲学で世を渡り歩いてきた自称〝有能〟監督の化けの皮は、今にも剥がれそうになっていた。

満員のジュゼッペ・メアッツァで、久方ぶりに聞くアンセムの音色に酔いながら、西班牙からの使者を葬る術を幾通りも思い描いていた不敵な笑みは、不自然な角度のまま凍りつき、凡(およ)そ考えつきもしなかった情景が展開される様を胡乱(うろん)げな両目だけが追っている。がっしりとした体躯は小刻みに震えだしていた。

その無様過ぎる動揺は、即座にピッチ上へ伝播し、獅子達を猫に変える。

絶望的なまでに鋭さの足りない牙は掠り傷一つ付けられず、まるでゴロゴロと喉元を転がされているかのように、いなされ、弄ばれ、あしらわれた。

自負が決壊する。

自信が塵芥と共に飛散する。

成り上がりに執念を燃やすうちに、いつしか魂には欲やら傲慢という名の悪鬼が巣喰い、鼻は天狗のように伸びた。

最も嫌っていたはずの、「裸の王様」が出来上がっていた。

そうだったのか――。

気付けたのは、まだ〝戻れる〟証。

罵倒や嘲りの日々に比べれば、この失態すら笑って見過ごせる。

積み上げてきた過去は、淘汰すべき遺物ではない。

今を活かし、未来を高めるための潤滑油だ。

瞳に宿った意志を奮い立たせ、ブーイング渦巻く夜のミラノに背を向けた。

明日から前を向くために。

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