7月22日、元メキシコ代表監督のズベン・ゴラン・エリクソンがノッツ・カウンティーのダイレクター・オブ・フットボール(主にスカウティング業務とユース世代の指導を担う)に就任した。日本のメディアは全く触れていないが、翌日のイングランドのフットボールメディアはこのニュースを大々的に報じていたという。それにしても、このところ解任続きで“落ち目”とはいえ、イングランド代表監督を務めたこともあるエリクソンが、リーグ2の――しかも昨季は24チーム中19位――クラブの重役に就くというのは異例中の異例。誰もが、その“裏”を探りたくなるというものだ。
今宵は、イングランド最古のプロクラブに刻まれた新たな伝説への一歩を、超ワールドサッカー内の東本貢司氏のコラムを通じて紹介する。
※編集・引用
エリクソンほどの経歴を持つ人物に“弱小クラブなりの低賃金”で納得いただくというわけにもいかない。実際、相当な報酬が提示されたようだ。しかしながら、カウンティーは前世紀末頃から深刻な財政難から抜け出せずに今に至っている。このトリックの種明かしは、「中東の特殊目的取得会社」へのオーナー権譲渡と、それに伴う経営陣の一新だった。
同グループのムント・ファイナンシャル・リミテッドの支援団体は、スイスに本拠を置く投資金融筋。いずれにせよ、マンチェスター・シティ、ポーツマスに続く第三の中東資本による侵略劇ということになる。
それでも疑問は残る。なぜ、たとえばプレミアの、せめてハル・シティとか今回昇格したバーンリー辺りではなく、三段階落ちのそのまた底辺に位置するクラブだったのか。真相は定かではないが、現地観測筋などによると、それはノッツ・カウンティーが史上最古のフットボールクラブ(1862年創立)だからということらしい。
ちなみに、ノッティンガム・フォレスト(1864年創立)、1863年創立のストーク・シティらも最古組となり、プロ化には至らなかった純粋なアマチュアクラブとしての最古はシェフィールドFC(同市に現存するウェンズデイ、ユナイテッドとは無関係)である。
要するに、ムントとエリクソンは絶対不滅の勲章を戴く伝説級のクラブを事実上ゼロから立て直す「夢のプロジェクト」を共有しようというわけだ。カウンティーのサイトによると、当面の目標は4~5年内の2部リーグ昇格で、さらに10年後を目途に「プレミアで優勝を争えるチーム」(ムントの指名で新CEに就任したピーター・トレンブリング)を目指す。
計画には、単なるチーム補強のみならず、マッチデイ以外でもファンにリッチで充実した余暇を提供する壮大な複合エンタテインメント施設を整備するなど、ノッティンガム市およびノッティンガムシャー全体までを視野に入れた、地域ぐるみの活性化が謳われている。
---------- キリトリ -----------
世界最古のプロフットボールクラブを舞台に、中東と知将の野望が渦巻き始めている。10年後にカウンティーがプレミアで優勝を争っているかどうか、まずは09-10シーズンでお手並み拝見といこう。
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